弁理士の職制

特許事務所には、弁理士個人で開業する個人事務所、数人の弁理士を抱える中堅事務所、十数人の弁理士と数十人の所員を抱える大手事務所など、その人員規模によって事務所の規模が大きく異なりますが、弁理士は同じような職制を取っています。

所長弁理士・・・特許事務所のトップの弁理士です。個人事務所ではその弁理士となります。複数の弁理士が対等の立場で経営に当たる場合には、複数連名の所長弁理士となるか持ち回りで所長となる場合もあります。

パートナー・・・特許事務所の共同経営者のことです。複数名の弁理士を抱える特許事務所で置かれることがあります。特許事務所によって異なりますが、出願明細書の代理人欄に名前が記載される弁理士は、代表パートナーとしての所長と他のパートナー弁理士であり、出願明細書作成などの実務作業にはあたらない場合が多いです。

担当弁理士・・・所長弁理士あるいはパートナーの指揮監督下において、出願明細書作成などの実務作業にあたります。弁理士資格の無い所員を束ねて仕事にあたるチーフ的な役割を持たせている特許事務所もあります。このクラスの弁理士は、出願明細書の代理人欄に名前を記載しないところが多いですが、逆に責任感を持たせるために所長弁理士とパートナーに加えて名前を入れるところもあります。

所員・・・弁理士資格を持たない事務員で出願明細書の作成補助、図面作成実務にあたります。将来の弁理士を目指す者は所員として特許事務所に入り、実務を通じて試験対策指導を受ける人もいます。

弁理士試験の概要と合格基準

弁理士となる資格を有するのは、弁理士法7条各号により弁理士試験に合格した者・弁護士となる資格を有する者・特許庁の審査官または審判官として通算7年以上審査または審判の事務に従事した者に限られます。

但し、弁理士法17条により弁理士となる資格を有する者が弁理士となるには、日本弁理士会に弁理士登録する必要があります。弁理士試験は、毎年1回、工業所有権審議会によって行われ、受験資格は特にありませんが1次試験から3次試験までがあります。

1次試験は短答式(択一式)で行われ、特許法、実用新案法、意匠法、商標法、工業所有権に関する条約(パリ条約、特許協力条約など)、著作権法、不正競争防止法が出題される。毎年5月に仙台市、東京都、名古屋市、大阪市、福岡市で行われています。

弁理士試験の合格基準は得点が一定比率おおむね60%以上の人のうち、論文式筆記試験を適正に行う視点から許容できる最大限度の受験者数を設定します。

2次試験は1次試験に合格した者のみが受験出来ます。論文式で行われ、工業所有権に関する法令(特許法、実用新案法、意匠法、商標法)と、以下の選択科目が出題されます。

地球工学 - 共通(基礎構造力学)、選択(建築工学、土質工学、環境工学)・機械工学 - 共通(基礎材料力学)、選択(流体力学、熱力学、制御工学)・物理工学 - 共通(物理学)、選択(制御工学、計測工学、光学、電子デバイス工学、電磁気学、回路理論、エネルギー工学、通信工学)・情報通信工学 - 共通(情報理論)、選択(通信工学、計算機工学、情報工学)・応用化学 - 共通(化学)、選択(有機化学、無機化学、材料工学、薬学、環境化学、生物化学)・バイオテクノロジー - 共通(生物学)、選択(薬学、環境化学、生物化学、生命工学、資源生物学)・弁理士の業務に関する法律 - 共通(民法)、選択(民事訴訟法、著作権法、不正競争防止法及び私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律、行政法、国際私法)等です。

理系あるいは法学の修士号を有する者や技術士、一級建築士、情報処理技術者試験のうち一部の試験区分の合格者、薬剤師、司法書士登録者、行政書士登録者などを有する一定の資格を持っている人は選択科目が免除されます。

工業所有権に関する法令の試験と選択科目の試験は別の日に行われるようになり毎年7月頃に東京都と大阪府で行われています。弁理士試験の合格基準は必須科目と選択科目の得点合計が、必須4科目の満点合計と選択科目の満点合計を加えた総合計の60%以上であって、かつ、必須3科目の得点合計が必須3科目の満点合計の60%以上であって、必須科目中及び選択科目に満点の50%未満の科目が1つもないことが弁理士試験の合格基準です。

3次試験は2次試験に合格した人が受験できます。前年の2次試験に合格し3次試験に不合格となった人も受験できます。口述式で行われ、工業所有権に関する法令が出題されます。3次試験の不合格者は以前は少なかったのですが、近年では70人前後が不合格となる試験となっています。毎年10月に東京都で行われています。

3次試験の合格基準は採点基準をA、B、Cのゾーン方式とし、合格基準はC評価の科目が2科目以上ないことと成っています。弁理士試験の難易度は志願者数は弁理士試験を開始してから平成18年度に1万人を超えました。また、受験者数も9,348名と過去最高となりました。

しかし、同年以降合格者の絞込みが始まり、受験者数も合格者数も減少傾向にあります。 受験者層は、理工系出身者が8,017名と全体の80%を占め、さらに最終学歴が修士号又は博士号である者は2,991名と理工系出身者の40%前後を占める点から受験者のうち理工系の高等教育を受けた者の割合が著しく高い点が特徴の一つです。

平成18年度試験の結果は受験願書提出時の自己申告制のため、信憑性に問題がありますが最終合格率6.8%、合格までの平均受験回数は10年以上の受験生も現実には多数存在しますが4.05回で合格者の平均年齢は33.6歳となっています。

平成20年度以降の弁理士試験は以下通り一部改正となる見込みです。知的財産に関する大学院修了者は修了後2年間・短答式試験の既合格者は合格後2年間は短答式試験が一部免除になります。選択科目の既合格者は無期限・必須科目の既合格者は合格後2年間は論文式試験が一部免除になります。

弁理士という言葉の意味

弁理士の弁と弁護士の弁は、現在では同じ字を使っていますが、かつては、辨理士、辯護士と書いていました。辨という字の意味はわきまえ知ることで、理という字の意味は筋道や物事の道理を意味します。従って、弁理士とは、筋道あるいは物事の道理をわきまえ知る者という意味になります。

一方、辯という字の意味は言い開く・言葉が自在に説法できることを意味し、護という字の意味はまもることを意味します。従って、弁護士とは、人のために言葉を自在に駆使してその人を護ることを役割とする者という意味になります。

なお、日本では、弁護士となる資格を持っている人は、弁理士登録をすることができます。もっとも、弁護士は、弁理士登録をせずとも弁理士業務を行うことができます。この点が、弁護士法3条2項に確認的に規定されています。

毎年7月1日は、日本弁理士会によって弁理士の日に定められています。これは、1899年(明治32年)のこの日に、現在の弁理士法の前身にあたる特許代理業者登録規則が施行されたことにちなむものです。この日の前後には、日本弁理士会や各地の支部により、講演会、シンポジウム、特許無料相談会などのイベントが開催されています。

特許事務所勤務の弁理士

弁理士の85%前後の弁理士は特許事務所又は法律事務所で働いています。特許事務所勤務弁理士の主な業務は。企業の求めに応じて出願書類を作成したり出願後に特許庁から通知される拒絶理由通知に応答しています。

存続中の権利の年金処理や特許、実用新案、意匠、商標に関する相談を受けたりすることが特許事務所勤務の弁理士の主な業務です。

また特許事務所勤務の弁理士のその他の業務として成立した特許、実用新案、意匠、商標の技術的範囲についての第三者の観点から鑑定を行ったりもします。主に特許・実用新案のライセンス交渉の代理や意匠あるいは商標は、その専門に特化した弁理士や特許事務所が行うことが多いです。

特許事務所勤務の弁理士は拒絶査定不服審判、無効審判の代理を行い特許・実用新案、意匠、商標権に関する補佐人・訴訟代理人としての業務も特許事務所勤務の弁理士が行います。

弁理士とは・・・

弁理士とは産業財産権等に関する業務を行うための国家資格者を言います。弁理士の職掌・資格に関しては弁理士法などで規定されています。徽章(バッジ)は菊の中央に桐をあしらったデザインで近年の知財立国推進とともに脚光を浴びていますが、申請代理人の歴史は1899年と古く国家資格としても弁護士についで歴史のある資格です。

弁理士の業務は自身の専門及び所属する職場により異なります。弁理士は特許専門の弁理士、意匠・商標専門の弁理士に大別されますが、特許を専門とする弁理士が比較的多いです。

他の法律系資格と異なり、通常の弁理士が扱う案件の一部はパリ条約ルートあるいはPCT条約ルートによる外国出願の基礎出願となるため、日本法を理解しているのみならず、主要諸外国の法制度についてもある程度の知識が求められます。

パリ条約ルート

最初に日本に出願してから、12か月以内なら、その間に他人が同一の発明について出願しても、新規性がないことを理由に拒絶されません。これをパリ条約上で優先権といいます。

アメリカでしたら英語で出願しなければいけませんが、この優先権が認められると12か月の余裕がありますので、その間に翻訳をすることができるというメリットがあります。

PCT条約ルート

日本の特許庁には日本語で出願でき、例えばアメリカとドイツを指定すれば、両国に出願したのと同じ効果がえられます。翻訳文の提出は、原則として出願日から20か月までなので、パリ条約ルートよりも余裕があります。